FX・為替差益の確定申告 Q&A
お答えします
FXの損益は原則として雑所得ですので、開業届の提出は求められていません。青色申告の対象にも入りません。損失を翌年へつなぐのは、確定申告書を連続して提出することによります。
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一解説
所得税法229条が届出を求めているのは、「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し」た場合です。届出の対象は、この三つの所得を生む事業に限られています。
青色申告も同じ範囲です。143条は「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者」が承認を受けられるとしており、タックスアンサー No.2070 も「青色申告をすることができる方は、不動産所得、事業所得、山林所得のある方です」と述べています。
店頭FXや取引所FXの差金決済による所得は、申告分離課税の対象となる雑所得です。雑所得は、この三つのいずれにも当たりません。
事業を始めた方には、開業届の期限と青色申告承認申請の期限が動き出します。開業届は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」、青色申告承認申請はその年の3月15日まで、1月16日以後に業務を開始した場合はその日から2か月以内です(229条・144条)。
FXの取引を始めた方には、この二つのどちらも動き出しません。口座を開いた日も、初めて建玉を持った日も、届出の起算点にはなりません。取引所やFX会社から交付される年間損益報告書をもとに、確定申告で申告することになります。
申告の期限のほうは、事業を営む方と同じです。確定申告書の提出期限は、その年の翌年2月16日から3月15日までの期間の末日です(120条1項)。
FXを始めるときには、口座開設の申込日、審査が通った日、証拠金を入金した日、初めて取引した日、初めて利益を確定した日が並びます。事業を始めた方であれば、このどこかに開業日を置くことになりますが、雑所得として扱われる取引ではその必要が生じません。
取引の規模が大きくなっても、扱いは変わりません。国税庁はタックスアンサー No.1500 で、雑所得を「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」と説明しています。
雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得の金額と損益通算できません。給与所得や事業所得の黒字と相殺する形にはならず、FXの損益はFXの枠の中で完結します。
事業所得であれば、青色申告の承認を受けて赤字を翌年以後3年間繰り越します。FXの損失にも翌年以後3年間の繰越しがありますが、こちらは青色申告とは別の手続です。
タックスアンサー No.1523 は、この繰越控除を受けるための手続を三つ挙げています。損失が生じた年分について申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出すること、その後において連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出すること、そして繰越控除を受けようとする年分についても同じ書類を添付して提出することです。
取引をしなかった年でも、この連続提出が途切れると繰越しがそこで終わります。開業届を出す代わりに気を配るのは、この毎年の提出です。
個人事業を営みながらFXをしている方は、その事業について229条の届出が要ります。開業日は、FXの取引ではなく、その事業を始めた日です。青色申告の承認申請も、その事業について出します。
承認を受けた場合でも、青色申告の効果が及ぶのは不動産所得・事業所得・山林所得です。FXの損益は雑所得のまま、申告分離課税の枠で計算します。
家族に事業を手伝ってもらって給与を払うなら、青色事業専従者給与に関する届出書が要ります。期限は青色申告承認申請と同じで、その年の3月15日まで、1月16日以後に事業を開始した場合はその日から2か月以内です(57条2項)。人を雇って給与を払い始めたときは、給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に出します(230条)。
二一次情報
所得税法 第57条第2項(青色事業専従者給与に関する書類の提出期限)(抜粋)
2 その年分以後の各年分の所得税につき前項の規定の適用を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同項の事業を開始した場合には、その事業を開始した日から二月以内)に、青色事業専従者の氏名、その職務の内容及び給与の金額並びにその給与の支給期その他財務省令で定める事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第120条第1項(確定所得申告)(抜粋)
第百二十条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき(第三号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合、第四号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた同号に規定する源泉徴収税額がある場合又は第五号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合を除く。)は、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
所得税法 第143条(青色申告)
第百四十三条 不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。
所得税法 第144条(青色申告の承認の申請)
第百四十四条 その年分以後の各年分の所得税につき前条の承認を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第229条(開業等の届出)
第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第230条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)
第二百三十条 国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、又はこれらを移転し、若しくは廃止した者は、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
所得税基本通達 143-1(業務を行う居住者)
143-1 法第143条に規定する「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者」とは、不動産所得の基因となる資産を貸付け(地上権の設定その他他人に当該資産を使用させることを含む。)、事業所得を生ずべき事業を経営し、又は山林を保有している居住者をいうことに留意する。
国税庁 タックスアンサー No.1500 雑所得(抜粋)
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません。
国税庁 タックスアンサー No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除(抜粋)
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除とは、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失がある場合に、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として、一定の方法により、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上その損失の金額を差し引くことです。
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けるためには、次の手続が必要となります。
(1) 先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の所得税につき、当該事項を記載した「令和 年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」および「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出すること。
(2) その後において連続して上記の申告書付表を添付した確定申告書を提出すること。
(3) この繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、上記の申告書付表および計算明細書を添付した確定申告書を提出すること。
国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度(抜粋)
青色申告をすることができる方は、不動産所得、事業所得、山林所得のある方です。
(1)原則
新たに青色申告の申請をする方は、青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出してください。
(2)新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)
業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出してください。
(3)相続により業務を承継した場合
その年の1月16日以後に業務を承継した場合は、業務を承継した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出してください。
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります(編集・加工を行った部分)。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三FX・為替差益の場合
開業届と青色申告承認申請は、どちらも不動産所得・事業所得・山林所得を対象にした手続です。FXの損益は申告分離課税の雑所得ですので、この二つの外側にあります。取引の規模を大きくしても、届出の対象に移るわけにはなりません。
その代わりに続けるのが、毎年の確定申告です。損失を翌年以後3年間つなぐには、損失が生じた年から繰越控除を受ける年まで、申告書付表を添付した確定申告書を連続して提出することが要ります。取引をしなかった年に提出を止めると、そこで繰越しが終わってしまいます。
※実際の取扱いは業態・契約・実態により異なります。個別の判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
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