FX・為替差益の確定申告 Q&A
お答えします
FXの利益は他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として課税されます。必要経費の範囲を定めているのは所得税法37条で、売買手数料や取引専用の機器・分析ツールの利用料は経費になります。ただしFXの所得は雑所得であるため、家事関連費の按分は青色申告者向けの緩和規定が使えず、施行令96条1号の区分要件だけで判断されます。
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一解説
国税庁は、FXの差金決済による差益について「他の所得と区分し、『先物取引に係る雑所得等』として、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税されます(申告分離課税)」としています。税率と、他の所得と合算するかどうかを定めた仕組みです。
必要経費を定めているのは所得税法37条1項で、雑所得の金額の計算もその対象に含まれます。算入できるのは、総収入金額を得るため直接に要した費用と、その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の二つ。売買手数料は前者にあたり、取引専用に用意したパソコンやモニター、有料のチャート・分析ツールや情報配信サービスの利用料は後者にあたります。
スプレッドは売値と買値の差として約定価格に織り込まれ、損益の計算にすでに反映されています。経費欄には並びません。
自宅のパソコンと回線で取引しているなら、電気代・通信費は仕事と生活の両方にかかわる家事関連費になります。ここがFXの経費の要です。
所得税法45条1項1号を受けた施行令96条は、家事関連費のうち経費にできるものを二つ挙げています。一号は、主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつその必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分。二号は、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者について、取引の記録等に基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分です。
このうち二号が対象としているのは不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務で、雑所得は含まれていません。FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」ですから、青色申告をしていても使えるのは一号だけになります。
その一号について、通達45-2 は業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するとしたうえで、5割以下であっても、必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えないとしています。取引専用の端末や回線を分けておけば、区分は数字で示せます。
通達は、業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額を、その習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り必要経費に算入するとしています。軸は二つ、その知識が業務の遂行に直接必要か、金額が通常必要とされる範囲かです。
国税不服審判所は、弁護士が大学院の修士・博士課程に支払った授業料について、専攻が弁護士業と関連性を有することは認めながら、むしろ自己研鑽のため進学したものと認めるのが相当で、業務遂行上直接かつ通常必要なものとは認められないとして、必要経費算入を認めませんでした。
FXでいえば、有料のニュース配信やチャートツールのように日々の取引に組み込まれているものは説明が立ちます。自己啓発の色が濃い講座や高額な情報商材は通りにくい部類で、金額が大きいものほど「通常必要とされるもの」の範囲かを問われます。
FX会社が発行する年間損益報告書が申告の土台です。複数の口座を使っているなら、業者ごとにすべて揃えてください。ひとつ欠けるとその年の損益が確定しません。解約した業者の分は後から取り寄せられないことがありますので、解約前に出力しておくことをおすすめします。
経費として計上したツール利用料や書籍は、いつ・何のために使ったかを一行添えて保管します。必要経費になるのは支払った金額ではなくその年に債務が確定した金額で、12月31日までに債務が成立し、給付の原因となる事実が発生し、金額が合理的に算定できていれば、決済が翌年でもその年の経費です。
年払いのツール利用料には別の道もあります。通達は、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係る前払費用を、継続してその支払った年分の必要経費に算入しているときは認めるとしています。
二一次情報
所得税法 第37条第1項(必要経費)(抜粋)
第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
所得税法 第45条第1項第1号(家事関連費等の必要経費不算入等)(抜粋)
第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
所得税法施行令 第96条(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
所得税基本通達 45-2(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
所得税基本通達 37-24(技能の習得又は研修等のために支出した費用)
37-24 業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。
所得税基本通達 37-30の2(短期の前払費用)
37-30の2 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下この項において同じ。)の額はその年分の必要経費に算入されないのであるが、その者が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入しているときは、これを認める。(昭55直所3-19、直法6-8追加)
国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識(抜粋)
事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
必要経費の算入時期
必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額(債務の確定によらない減価償却費などの費用もあります。)です。
つまり、その年に支払った場合でも、その年に債務の確定していないものはその年の必要経費になりませんし、 逆に支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。
この場合の「その年において債務が確定している」とは、次の3つの要件をすべて満たす場合をいいます。
(1)その年の12月31日までに債務が成立していること。
(2)その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3)その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。
注意事項
必要経費に算入する場合の注意事項については、次のとおりです。
(1)家事上の費用は必要経費となりませんが、個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。
(例)店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
(2)必要経費になるものとならないものの例
イ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。逆に、受け取った人も所得としては考えません。
これは、土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。
ロ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与は除きます。)は必要経費になりません。
(注)青色申告者でない人についての事業専従者控除の金額が、必要経費とみなされます。
ハ 業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になります。
(注)不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等を取得するために要した負債の利子の額は、不動産所得の計算上必要経費になりますが、不動産所得の金額が損失(赤字)となった場合には、その負債の利子の額に相当する部分の損失の額は生じなかったものとみなされ、他の所得金額との損益通算はできません。
ニ 業務用資産の取壊し、除却、滅失の損失および業務用資産の修繕に要した費用は、一定の場合を除き必要経費になります。
ホ 事業税は全額必要経費になりますが、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。
ヘ 所得税や住民税は必要経費になりません。
ト 罰金、科料および過料などは必要経費になりません。
チ 公務員に対する賄賂などについては必要経費になりません。
国税庁 タックスアンサー No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係(抜粋)
他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税されます(申告分離課税)。
国税庁 タックスアンサー No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除(抜粋)
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除とは、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失がある場合に、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として、一定の方法により、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上その損失の金額を差し引くことです。
国税不服審判所 平成15年10月27日裁決(裁決事例集 No.66-120頁)公表裁決事例要旨
弁護士業を営む請求人は、大学院の修士及び博士課程の授業料等並びに米国K大学への寄付金は業務遂行上必要な支出であるから事業所得の金額の計算上必要経費に算入される旨主張する。
しかしながら、修士及び博士課程の専攻は、請求人の営む弁護士業と関連性を有していることは認められるものの、むしろ請求人の自己研鑽のため進学したものと認めるのが相当で、また、当該寄付金の支出は、請求人の善意的心情からのものと認められ、いずれも業務遂行上直接かつ通常必要なものとは認められず、事業所得を生ずべき業務について生じた費用ではないから、所得税法第37条第1項に規定する必要経費とすることはできない。
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります(編集・加工を行った部分)。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三FX・為替差益の場合
FXの経費が伸びにくいのは、所得区分が雑所得だからです。青色申告をしていても施行令96条二号は使えず、家事関連費は一号の「明らかに区分できるか」だけで判断されます。裏を返せば、取引専用にしてしまえば按分の議論そのものが要りません。端末も回線も分けておくのが、いちばん強い裏づけになります。
経費より税額を動かすのが損失の繰越控除です。国税庁は、「先物取引に係る雑所得等」の計算上生じた損失を翌年以後3年間にわたり繰り越し、繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として差し引けるとしています。ただし手続要件があり、損失が生じた年分の確定申告書に申告書付表と計算明細書を添付し、その後において連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出する必要があります。損が出た年こそ申告してください。
また、FXの損失を給与や事業の所得から引くことはできません。同じ区分に属する商品の範囲は、下の原文とリンク先でご確認ください。
※実際の取扱いは業態・契約・実態により異なります。個別の判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
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